医薬品・医療用具等安全性情報182号(H14/10/31) |
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★医薬品情報提供ホームページ(医薬品機構、厚生労働省)より
No. | 医薬品等 | 対策 | 情報の概要 |
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1 | 卵胞ホルモン/ 黄体ホルモン |
使 | 平成14年7月,米国国立心肺血管研究所(National Heart, Lung and Blood
Institute)は,Women’s Health
Initiativeの研究の一部として実施していた,閉経期における各種疾患予防のための結合型エストロゲン/酢酸メドロキシプロゲステロン併用療法のリスクとベネフィットを評価する臨床試験の中止と,関連する主な結果を公表した。中止の理由は,HRT群とプラセボ群における浸潤性乳がんの発生頻度の差が,試験計画時に中止基準として設定したリスクの範囲を上回ったことによるものである。 今回の米国における一連の決定は,我が国において直ちに安全対策が求められる事態ではないと考えられるが,承認されている卵胞ホルモン剤の中には,更年期障害や骨粗鬆症を適応として使用されている製剤もあることから,使用上の注意を改訂し,医療関係者に情報提供することとした。今般あわせて,臨床試験の概要および我が国の状況について紹介するものである。 |
2 | ポリ塩化ビニル製 医療用具 |
ポリ塩化ビニル製の医療用具は,素材が化学的に安定であること,また,柔軟性・耐久性等に優れていることなどから,内外において医療の場で広く使用されている。 一方,ポリ塩化ビニルは,その特性である優れた柔軟性を保持するために,材質中に可塑剤が添加されており,この可塑剤(DEHP:フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)が接触する溶媒中に溶出してくることが知られている。このDEHPの溶出は,医療用具においても確認され,昨年来,米国FDA等が臨床使用における患者へのDEHPの曝露について報告している。我が国で平成13年度に実施された厚生労働科学研究医薬安全総合研究事業において日本の市場流通品を用いて検証した結果を踏まえ,評価検討し,DEHPを可塑剤として含有するポリ塩化ビニル製の医療用具に係る現在の考え方をとりまとめたことから,今般,これらの知見を紹介するとともに,医療関係者等に対し,臨床上使用されるポリ塩化ビニル製の医療用具について必要な注意を喚起することとした。 |
目次へ |
(1) | 対象者のBMI(Body Mass Index)の平均は28.5であり,また対象者の約3分の2は,BMIが25以上で,肥満傾向であること。 |
(2) | 対象者の約半分は喫煙経験者であること。 |
(3) | 対象者の約3分の1は高血圧症であること。 |
1) | 我が国の状況は次のとおりである。
| ||||||||
2) | 以上のことから,今回のWHI PERT試験の中止は,我が国において緊急な安全対策を講ずる事態ではないと考えられる。しかしながら,我が国において承認されている卵胞ホルモン剤の中には,更年期障害や骨粗鬆症を適応として使用されている製剤もあることから,WHI PERT試験の結果について医療関係者に情報提供することは必要である。現在,WHI PERT臨床試験の結果は必ずしも正確に伝えられているとは言えず,更年期障害の有用な治療の選択肢である卵胞ホルモン療法の施行や普及に誤解を与えないよう,現在卵胞ホルモン療法を受けている人あるいはこれから受けようとしている人に対し,医療関係者を介した正確な情報提供が必要である。 | ||||||||
3) | 結合型エストロゲンについては,我が国では,骨粗鬆症の適応はないが,更年期障害への投与に際してWHI PERT臨床試験の結果を踏まえた情報提供をすべきである。それ以外の卵胞ホルモン製剤で,骨粗鬆症あるいは更年期障害を適応とする製剤についても,WHI PERT臨床試験の結果の情報提供をすべきである。また,骨粗鬆症治療薬としての卵胞ホルモンの位置づけについては,さらに今後の研究成果の蓄積が期待されるところである。 | ||||||||
4) | 更年期障害あるいは骨粗鬆症を適応とし,長期使用の可能性がある卵胞ホルモン製剤については,その有用性とリスクを考慮し,十分な観察を行いながら,患者ごとにその採用及び継続を考慮すべきである。 |
《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》 | |
〈結合型エストロゲン〉 | |
[その他の注意] | ・黄体ホルモン剤を長期間併用した閉経期以降の婦人では,冠動脈性心疾患,脳卒中,静脈血栓塞栓症,乳がんを発生する危険性が対照群の婦人に比較して,わずかながら統計的有意差をもって高くなるとの臨床試験の報告がある。 ・卵胞ホルモン剤を長期間使用した閉経期以降の婦人では,卵巣がんを発生する危険性が対照群の婦人に比較して高くなるとの疫学調査の結果が報告されている。 |
〈エストラジオール製剤(更年期障害又は骨粗鬆症の適応をもつ製剤)〉 | |
[その他の注意] | ・結合型エストロゲンと黄体ホルモン剤を長期間併用した閉経期以降の婦人では,冠動脈性心疾患,脳卒中,静脈血栓塞栓症,乳がんを発生する危険性が対照群の婦人に比較して,わずかながら統計的有意差をもって高くなるとの臨床試験の報告がある。 ・卵胞ホルモン剤を長期間使用した閉経期以降の婦人では,卵巣がんを発生する危険性が対照群の婦人に比較して高くなるとの疫学調査の結果が報告されている。 |
〈エストリオール製剤(更年期障害又は骨粗鬆症の適応をもつ製剤)〉 | |
[その他の注意] | ・結合型エストロゲンと黄体ホルモン剤を長期間併用した閉経期以降の婦人では,冠動脈性心疾患,脳卒中,静脈血栓塞栓症,乳がんを発生する危険性が対照群の婦人に比較して,わずかながら統計的有意差をもって高くなるとの臨床試験の報告がある。 ・卵胞ホルモン剤を長期間使用した閉経期以降の婦人では,卵巣がんを発生する危険性が対照群の婦人に比較して高くなるとの疫学調査の結果が報告されている。 |
〈参考文献〉 | |
1) | Writing Group for the Women’s Health Initiative Investigators. Risks and Benefits of Estrogens Plus Progestin in Healthy Postmenopausal Women.JAMA,288:321-333(2002) |
2) | Rodriguez C., et al.:Estrogen Replacement Therapy and Ovarian Cancer Mortality in a Large Prospective Study of US Women.JAMA,285:1460-1465(2001) |
3) | Lacey J.V., et al.:Menopausal Hormone Replacement Therapy and Risk of Ovarian Cancer.JAMA,288:334-341(2002) |
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治療方法 |
DEHP曝露量(μg/kg/day) | |
成人(70kg) |
新生児(4kg) | |
1)静脈注射(点滴) | ||
(1)晶質液(脂溶性でない薬液) |
5 |
30 |
(2)可溶化剤含有液(脂溶性薬液) |
40〜150 |
30 |
イミペネム(環流時間0.5h) |
1.5 | |
ミダゾラム(環流時間24h) |
7 | |
フェンタニル(環流時間24h) |
33 | |
プロポフォール(環流時間24h) |
1640 | |
2)中心静脈栄養 | ||
(1)脂質なし |
30 |
30 |
(2)脂質添加 |
130 |
250 |
3)輸血 | ||
(1)外傷患者 |
8500 |
|
(2)成人輸血/ECMO |
3000 |
|
(3)置換輸血/NICUの新生児 |
22600 | |
(4)交換輸血/化学療法や貧血治療等 |
90 |
|
(5)冠動脈バイパス手術等外科患者 |
280 |
|
(6)クリオプレシピテートによる血液凝固療法 |
30 |
|
4)心肺バイパス手術 | ||
(1)冠動脈バイパス術 |
1000 |
|
(2)心臓移植 |
300 |
|
(3)人工心臓移植 |
2400 |
|
5)ECMO(体外膜型肺) |
14000 | |
6)アフェレーシス |
30 |
|
7)血液透析 |
360 |
|
8)腹膜透析 |
<10 |
|
9)経腸栄養 |
140 |
140 |
注:FDAの報告書から概要を転記。 |
○ |
脂溶性薬剤を投与するときにはDEHPを含有する製品は使用しない。 |
○ |
ECMO,心臓移植,心臓バイパス,血液透析等の大量被曝する療法については,代替品を使用すること。 |
○ |
できるだけヘパリンコートチューブを用いるべき。 |
○ |
胎児・新生児・乳児・小児は最も危険が高い集団として代替品への切り替えを優先すべき。 |
○ |
成人であっても,感受性が高い可能性がある外傷患者(心臓移植患者,妊婦,授乳婦)については代替品を使用すべき。 |
1) | 直接に体液又は薬剤に接触することによって,可塑剤であるDEHPが体内に移行するおそれがあるポリ塩化ビニル製医療用具。 |
2) | 国内の使用数量が多い医療用具。 |
3) | FDA報告等において,特にDEHPが大量に溶出すると指摘されている医療用具。 |
4) | 以上の項目に該当するもののうち,国内販売シェアが最も大きい医療用具の銘柄。 (1)血液バッグ (2)人工腎臓用血液回路 (3)人工心肺用血液回路 (4)輸液セット (5)延長チューブ (6)フィーディングチューブ |
条件等 |
曝露量(μg/kg/day) | ||
成人(50kg) |
小児等(体重) | ||
血液バッグ | 全血3w,4℃ (200mLバッグ) |
140 (2.5L輸血) |
180 (200mL輸血,体重3kg) |
血液透析回路 | 週3回 |
67 |
46 |
人工心肺回路(ノンコート(1)) | 6時間循環 |
350(**) |
710(11kg) |
人工心肺回路(ヘパリンコート(1),共有結合) | 6時間循環 |
160(**) |
330(11kg) |
人工心肺回路(ノンコート(2)) | 6時間循環 |
350(**) |
720(*)(11kg) |
人工心肺回路(ヘパリンコート(2),イオン結合) | 6時間循環 |
300(**) |
610(*)(11kg) |
輸液セット(PVC) | 抗真菌剤 |
8.8 |
− |
免疫抑制剤A |
92 |
− | |
延長チューブ(PVC) | 脂肪乳剤 |
7.2 |
− |
抗真菌剤 |
0.6 |
− | |
免疫抑制剤A |
15 |
− | |
免疫抑制剤B |
13 |
− | |
抗悪性腫瘍剤 |
1.4 |
− | |
延長チューブ(non-PVC) | 脂肪乳剤 |
0.1 |
− |
抗真菌剤 |
0 |
− | |
免疫抑制剤A |
0 |
− | |
免疫抑制剤B |
0.6 |
− | |
抗悪性腫瘍剤 |
0 |
− | |
フィーディングチューブ | 粉ミルク |
− |
100(1kg) |
1) | 新生児・乳児に使用されるフィーディングチューブについては,(1)対象患者の感受性が高いと考えられること,(2)体重が少なく,体重あたりの被曝量が大きくなると想定されること,(3)脂溶性のミルク等を流すために大量のDEHPが溶出する可能性があること,(4)代替製品が存在することから,できるだけ早期に使用を中止し,代替品の使用に切り替える。 |
2) | ヘパリンコーティングチューブについては,全くDEHPが溶出しないとする海外の報告もあるが,国内流通品についての検討結果では,完全にDEHPの溶出を防止することができないが,曝露量を低減することが確認されており,DEHP曝露の低減の手段の一つとして参考にされるべきものとして周知する。なお,ヘパリンコートについては,生物由来の製品であるが,共有結合タイプの方がイオン結合タイプに比べて,よりDEHPの溶出を低減する傾向にあることも報告されていることも参考にするよう付記する。 |
3) | 人工腎臓用血液回路については,(1)長時間の体外循環により大量のDEHPに被曝する可能性があること,及び(2)繰り返し使用されるものであることから,新生児・乳児等の感受性が高いと考えられる患者に使用される場合には,臨床上治療等に支障を生じない範囲(ヘパリンコーティングチューブの併用や回路の一部を代替品で置き換える等)で代替品の使用に切り替える。 |
4) | 人工心肺回路及びその他の血液回路については,一時的に大量のDEHPに被曝する可能性があるものの,生涯を通じて反復して被曝する可能性は低いことから,代替品の使用に切り替えることが可能な場合(ヘパリンコーティングチューブの併用や回路の一部を代替品で置き換える等)には,代替品への切り替えを検討する。 |
5) | 輸液チューブ及び延長チューブについては,使用する薬剤に依存してDEHPが溶出することから,特に脂溶性の高い薬剤を使用する場合には,代替品への切り替えを検討する。 |
6) | さらに,感受性が高いとされている新生児・乳児に加え,これらに影響する可能性が高い妊婦,授乳婦への適用については,優先的に代替品に切り替える等配慮する。 |
7) | 血液バッグについては,DEHPによる赤血球保護作用があることが報告されており,現時点で,代替品に切り替えなくてはならないものとは考えられないが,低温で保存することにより,DEHPの溶出を押さえることができるとの報告もあることから,保管温度を下げできるだけ短期間の保存にするように配慮する。 |
1) | 医薬品との組合せ使用の際の選択が可能となるよう,DEHPを可塑剤として使用している医療用具であって,溶出したDEHPが体内に移行する可能性がある医療用具については,可塑剤としてDEHPを使用している旨の記載を徹底する。 |
2) | DEHPを可塑剤として使用している医療用具の機能を完全に代替できる優れた代替品の開発を促進するよう周知する。 |
お知らせ NTTのファクシミリ通信網サービス「Fネット」を通じ,最近1年間の「医薬品・医療用具等安全性情報」がお手元のファクシミリから随時入手できます(利用者負担)。 「Fネット」への加入等についての問い合わせ先:0120-161-011 なお,医薬品情報提供ホームページ(http://www.pharmasys.gr.jp/)又は厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)からも入手可能です。 |
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